「さて、旅立ったのはいいけど、どこに行けばいいんだろう、あにぃ?」
「大丈夫。僕達のルートは決まっている。
まずベベルを出てマカラーニャの森を抜け、氷湖のマカラーニャ寺院に行く。
続いて雷平原を通り抜け、幻光河を渡ってジョゼ寺院へ。
それが終わったらミヘン街道を通り抜け、ルカで船に乗って
キーリカ島へ。キーリカ寺院にお参りして、また船に乗ってビサイド島の寺院に。
そしたら同じ道を折り返していったんベベルに戻り、
マカラーニャの森を抜けてナギ平原を通り、ガガゼト山を越えて
ザナルカンドに到着。
究極召喚を手に入れたら、ナギ平原でシンを待ち、倒す。
それで旅はおしまい。あとはベベルに帰るだけ。」
「うー...あにぃ、長すぎてわかんないよー。」
「いいよ、無理に覚えようとしなくても。僕がその都度道を教えていくから。」
3人はマカラーニャ氷湖へやってきた。
「うわあ...見渡す限り氷ですね、兄君様...」
湖はもののみごとに凍り付いている。クレバスさえある。
声も出ず、3人はしばらく見渡していた。
ところが、その静寂は突如として破られた。
兄の右側から、スノーウルフが襲いかかってきたのである。
「うわぁっ!」
兄は間一髪で倒れて避けた。
「兄君様っ!危ない!」
「えっ?」
見ると左側には大型甲虫のマフートがいた。
「う、うわわわわわわ!」
びっくりして兄は急いで前方へ逃れた。
氷に足を取られながらも、なんとか這って逃れた。
その兄とモンスターとの間に、急いで衛と春歌が立つ。
「あにぃ、さがって!こいつらはボク達でやる!」
言われて兄は立ち上がり、もう2歩退く。
「私はこっちの固そうなのを倒します。衛ちゃんはあの素早いのを!」
「オッケー!春歌ちゃん、いくよ!
たぁぁーーーっ!」
「とぉーーーっ!」
かけ声をあげてガード達がモンスターに襲いかかる。
マフートが腕を振り上げる。しかしその動きは鈍く、
春歌は難なくかわして得意のなぎなたをマフートの頭に叩き込んだ。
がっ!と甲殻にひびが入る。マフートは呆気なくくずおれた。
鈍く固いモンスターには、鋭く重い武器が有効なのである。
対してすばっしこいモンスターに対抗するには、同等のすばやさで襲いかかるのが一番。
春歌の隣では、衛がローラーブレードで飛び回りながら
腕にはめたナックルでスノーウルフに打撃を加えている。
スノーウルフの爪が衛の左二の腕をかする。
素早く右腕でボディブローを叩き込む衛。
腹に強烈な一撃を加えられたスノーウルフは、氷の床に叩き付けられ、
そのまま動かなくなった。
「いててててて...ちょっと油断しちゃった。」
「大丈夫かい、衛?いま治してあげるよ。......ケアル!」
兄は外傷治癒の呪文を唱えた。
衛の腕についた傷がふさがっていく。
「...よし。どうだい、まだ痛むかい?」
「ううん、もう大丈夫。行こう、あにぃ!」
それから3人は何度かモンスターに襲われたが、
衛と春歌の活躍で難なく撃退し、
氷湖の真ん中にそびえるマカラーニャ寺院に到着した。
「ふーっ!あー寒かったー。」
衛もさすがにこの冷気にはこたえたようで、
ストーブで暖められた寺院の中が天国に思えた。
春歌と兄は安堵の溜め息をついている。
安心した3人の前に、寺院お付きの僧官が現れ声を掛ける。
「召喚士一行のみなさんですね。ようこそマカラーニャへ」
はっ、と兄は自分がここに来た目的を思い出した。
「焦ることはありませんよ、召喚士様。こちらで少しお休みになってください」
兄と妹達は僧官の間に案内された。
熱い紅茶を飲んで一休みしながら、3人は雑談をする。
「あにぃ...大きなドアの前に、りっぱな石像が建ってたね。」
「そうですね。ベベルでも同じようなものを見かけましたが...」
「ああ、あの像か。あれは昔シンを倒した『大召喚士』様の像さ。
確か、一番若いのがブラスカ様、剣を持っているのがヨンクン様、
裾の長いローブを着ているのがガンドフ様、髭が立派なのがオハランド様だったな。
シンを倒したことがあるのはこの4人だけなんだよ。」
「へーえ...いつかあにぃも像を並べてもらえるかな?」
「僕がシンを倒せば...ね。
さ、もう一休みしたら、試練の間に行って祈り子様に会いに行こう。」
2時間後。
祈り子の間へ続く次の間のパズルを突破し、祈り子に会った一行が
4つの像に見守られたドアから出てきた。
さきほどの僧官がまたしても声を掛ける。
「おめでとうございます、召喚士様。
ですが、まだまだ旅は長うございます。
スピラの希望として、くじけないでがんばってください」
兄は僧官に軽く微笑みを返し、黙って寺院のドアを開けて外に出た。
「ふーっ...外の空気がいやに新鮮に感じられますわね。」
外に出るなり、春歌が開口一番つぶやいた。
「...そうだね。でもこうしているあいだにも
シンの毒気は世界を覆おうとしている。
僕たちは旅を続けなくちゃいけない。」
「そうだね、あにぃ!行こう!」
3人は次なる目的地・ジョゼに向かって歩き始めた。