ロコ「ああ関羽よ、どうしてあなたは私のために戦ってくれないの...
   私はあなたに全てを与えることもできるというのに...」

冊子を見ながら、ロコちゃんが何やら読み上げているようです。
ハム太郎がそれをケージの中から不思議そうに見つめています。

ロコ「...ふーっ。
   このくらいでいいかな?
   あ、ハム太郎。ほっといちゃってゴメン。
   ちょっと、お楽しみ会でやる劇の練習をしてたの。」

ハム太郎には、ロコちゃんが何かしているということよりも、
言っていたセリフの意味が気になって仕方がないようです。
目をぱちくりさせていました。

  *********

...翌日。
いつも通り地下ハウスに集まったハムちゃんず。
ハム太郎は早速、ロコちゃんが言っていたセリフを
覚えている限りでみんなに伝えました。

のっぽ「...うーん、それはきっと『三国志演義』の『関羽千里行』だと思うよ。」

ハム太郎「サンゴクシ?何なのだそれ?」

パンダ「僕も知らないなぁ〜。」

リボン「...わたしもでちゅわ。」

タイショー「それうまいのか?」

のっぽ「ありゃりゃ、みんな三国志のことは知らないみたいだね。
    丁度いい、この際みんなに三国志を知ってもらうための
    講義を開こうか。」

トラハム「さんせーい!」

マフラー「やりましょう、やりましょう!」

ちび丸「うきゅー!」

  *********

...というわけで、ひさびさにハムちゃんずの学校が開校しました。
今日は中国の歴史のお勉強です。

のっぽくんが、地図を指さして話しはじめました。

のっぽ「...いまは中国、中華人民共和国があるこの地には、
    1800年くらい前までは漢帝国という国があったんだ。
    漢帝国は400年くらい平和な時代が続いてたんだけど、
    その間に、皇帝をはじめとした人々の気はゆるみきって
    お城にも悪い家来たちがふえてきた。
    彼等はちゃんとした政治をしないから、
    一般の人たちの生活はとっても苦しくなった。
    そんな状態を見かねて、
    張角という人が立ち上がったんだ。」

こうし「悪い家来たちって、どんな人なんですか?」

のっぽ「具体的には、宦官だね。」

かぶる「カンガン?」

のっぽ「宦官というのは、男の大事な所を切り落とした男のことだよ。」

タイショー「のっぽー、男の大事なんて回りくどい言い方
      しねえで、はっきりち○○って...」

トラハム「トラハムパーンチ!」

タイショー「あでっ!!」

マフラー「タイショーくん!女の子がいるんだから、言葉を慎みなさい!」

タイショー「へーい。いててててて...」

こうし「あの、で、どうしてわざわざ切り落とすんですか?」

のっぽ「皇帝のお后様の身の回りのお世話をさせるためさ。
    お世話には力仕事の男手もいるんだけど、
    お后様にエッチな事をされたら皇帝は困る。
    でも、大事な所を切り落とされた男は、
    エッチな事を考えることが出来なくなるんだ。
    しかし、その分のエネルギーは残っていて
    それが悪いことを考えるほうに向いてしまう。
    おまけに、仕事をよくしてお后様に信用されれば
    その口で皇帝にも信用され、えらい身分にしてもらえる。
    こんな感じで、宦官がのさばるもんだから
    国は滅茶苦茶になったんだ。」

めがね「で、張角って人が立ち上がったんですね。」

のっぽ「そうそう。そして、張角に応じてどんどん人が集まって、
    『黄巾賊』を結成したんだ。
    巾とはリボンという意味で、
    みんなが張角のマネをして
    黄色いリボンをつけていたからこう呼ばれたんだ。」

そう言って、のっぽくんは黄巾賊と板書しました。

リボン「男の子がリボンをつけるんでちゅか?」

のっぽ「当時の中国では、男の人は髪の毛を肩より少し上までのばして、
    頭の後ろにお団子をつくって、リボンで束ねるのが普通だったんだ。
    で、その上に頭巾や冠や兜をかぶったりしたんだよ。」

まいど「かぶとをかぶっとる、なんてな!」

かぶる「...」

呆れたかぶるくんは、お鍋の中に引っ込んじゃいました。

のっぽ「んんっ、で、この黄巾賊も力を伸ばすにつれ、
    どんどん強盗殺人軍団になっていってしまう。
    だから、黄巾賊をやっつけるため、
    中国各地で、いろんな英雄たちが動き始めた。
    黄巾賊はすぐにつぶれたが、めちゃくちゃになった漢帝国は
    もうもとにもどらない。
    そうすると、漢帝国に代わる新しい国のリーダーの座を
    英雄たち同士で争うようになるんだ。
    そのうちに、漢帝国がなくなって、三つの国ができる。
    ずるさで有名な曹操のつくった魏、
    誰とでも仲良くできる劉備の蜀、
    そして若くて元気なのが自慢の孫権の呉だ。
    最後にはこの三つの国の戦いになる。
    どこが勝ったと思う?」

まいど「そら、曹操にきまってるやろ!」

めがね「いやいや、劉備だと思いますよ〜。」

まいど「なに言うてんねん!あ、そや、マフラーちゃんはどう思いやす?」

マフラー「うーん...えっと...孫権じゃないかしら。
     ねっ、ちび丸ちゃん。」

ちび丸「うきゅ。」

まいど&めがね「ずでっ!」

のっぽ「残念だけど、どれでもないんだ。
    劉備も曹操も孫権も、決着がつかないうちに死んでしまう。
    その後も戦いは続くんだけど、
    まず魏が蜀をやっつけてしまう。
    続いてその魏も、司馬炎という人に国を奪われ、
    晋という国に変えられる。
    その晋が呉を落として、おしまい。」

パンダ「なーんだ、ぽっと出が最後に勝っちゃうのか。」

のっぽ「そういうこと。でも、それまでの戦いの中で、
    かっこいいエピソードがたくさん生まれて、
    いろんなお話がのちの世に残ったんだ。
    それをまとめて小説にしたのが『三国志演義』というわけさ。」

ハム太郎「そのエピソードのひとつが、『関羽千里行』なの?」

のっぽ「うん。関羽ってのは、劉備の義兄弟なんだ。」

こうし「ぎきょうだい?」

のっぽ「ほんとは兄弟じゃないんだけど、兄弟だと思って
    仲良くしましょうっていう約束のことなんだ。
    関羽千里行は、このきずなの強さを示すエピソードなんだ。
    関羽が敵である曹操につかまって、
    私の部下になりなさいと要求するんだけど
    関羽はこう言ったんだ。
    『劉備兄さんがどこにいるかわかったら、
     あなたのもとを去って兄さんの所に戻ります。』
    ってね。」

タイショー「で、もちろん約束守ったんだろ?」

のっぽ「守った。
    5つの門を守る人をやっつけて、
    むりやり門をこじ開けてまで劉備のところに帰ったんだ。
    すごいでしょ。」

トラハム「なぁ〜んか、かっこいいなぁ...」

のっぽ「そうだね。かっこいいと思う人がいっぱいいるからこそ、
    このお話が今までず〜っと残っているんだね。」

ハム太郎「やるのだ!」

一同「へ?」

ハム太郎「ハムちゃんずも、関羽千里行の劇をやるのだ!!」

こうし「えっ、ハム太郎さん、急に...」

リボン「いいでちゅわ、やりましょう!」

タイショー「さんせーい!」

ねてる「ZZZzzz...」

...というわけで、みんなで関羽千里行をやることになりました。

  *********

パンダ「よくできてるでしょ!」

ハム太郎「...よくできてるけど...やっぱりハムスターに
     人間のヒゲはかっこ悪いのだ...」

のっぽ「でも、関羽は『ひげどの』と呼ばれていたくらい
    ヒゲが立派だったからなあ...
    つけないわけにはいかないよ。」

そうです。パンダくんは、関羽を演じるハム太郎のために、
関羽のヒゲと同じ形の付けヒゲを作ってくれたのです。

パンダ「ハム太郎君、機嫌なおしてよ。これあげるから。」

ハム太郎「?」

パンダ「じゃーん!これぞひまわりの形をした『ひまわり堰月刀』!
    どうだい、かっこいいでしょ!」

ハム太郎「おーっ!すごいのだ!かっこいいのだ!」

のっぽ「(やれやれげんきんなんだから...)
    他のみんなも、準備はいいかい?」

一同「おっけー!」

というわけで、ハム太郎主演による劇『関羽千里行』のはじまりです!

  *********

ところかわってこちらは、ロコちゃんが通う学校。
お楽しみ会はすでに始まっていて、
ロコちゃんたちの劇の真っ最中です。

ジュン「曹操様、関羽を追い詰めました。」

ロコ「ご苦労様です、夏候惇。」

ジュン「どうします?やっつけますか。」

ロコ「いいえ、私は関羽の強さと公正さを買っています。
   私にとって彼ほど部下にしたいと思える者はいません。
   誰か関羽を説得して引き入れなさい。」

カナ「それでしたら、わたくしに...」

ロコ「おお、張遼。自信はありますか?」

カナ「わたくしは関羽と何度も渡り合った知己です。
   わたくしが説得すれば、きっと応じてくれるでしょう。」

ロコ「では、お願いします。くれぐれも彼を死なせないで下さい。」

  *********

...さて、地下ハウスでは...

ハム太郎「...もうどうしたって逃げられないのだ。
     こうなったら、いさぎよく戦って死ぬのだ!」

こうし「ちょっと待ってください関羽さーん!」

ハム太郎「誰...あっ!!張遼!
     何しに来たのだ!降参でもすすめに来たのか!」

こうし「そうですよ。
    だめですよ関羽さん、こんな所で討ち死になんて。」

ハム太郎「忠義を尽くして死んで何が悪いのだ!」

こうし「いまの関羽さんが討ち死にするのは忠義じゃありませんよ。
    関羽さんは劉備さんと『死ぬときはいっしょだ』って
    約束したじゃないですか!
    ここで死んだら、その約束を破っちゃいますよ。
    それに劉備さんの奥さんとお子さんを守れって
    命令されたそうじゃないですか。
    どうなったのか確かめなくていいんですか?」

ハム太郎「...はっ!
     そ、そうだったのだ。
     わかった、降参するのだ。でもただじゃ降参しないのだ。」

こうし「...何をしろと?」

ハム太郎「ぼくは曹操と三つの約束をするのだ。
     まず、ぼくは曹操に降参したんじゃない。
     漢帝国に逆らわないだけなのだ。
     そのことをわかってほしいのだ。
     次に、劉備兄さんの奥さんと子供を、
     ぼくに代わって守るのだ。
     そして、劉備兄さんがどこにいるかわかったら、
     あいさつなしで黙って帰らせてほしいのだ。
     曹操がこれぜんぶ守ってくれるなら、言うことを聞くのだ。」

こうし「わかりました〜。曹操様に相談してきまーす。」

  *********

ロコ「...関羽が、その約束を?」

カナ「はい。」

ロコ「そうですね...
   一つ目は、もちろん飲みます。
   それだけの侠気があるからこそ、
   私は関羽を望むのです。
   二つ目も、問題なく出来るから飲みます。
   しかし、気になるのは三つ目です。
   私は関羽を手放したくないのですから...」

ジュン「関羽がそれだけ劉備を慕っているからこう言うのですよ。
    それなら、曹操様が関羽に恩をたっぷりかければ、
    きっと曹操様になついてくれますよ。
    そしたら、帰るなんて言わなくなるでしょうね。」

ロコ「なるほど、そうですね。わかりました、三つ目も飲みます。」

カナ「それでは、関羽を呼んできます。」

  *********

劇の場面は両方とも、辛くも同時に、
降伏した関羽が曹操のところへやって来るシーンになりました。

...そしたらどうでしょう。
なんと、ロコちゃんとハム太郎は
お互い離れた場所にいるのに
目の前で対峙しているような不思議な感覚に襲われました!


ハム太郎「(この感じ...何?
      ロコちゃんがそばにいるみたいなのだ...)」


ロコ「(ハム太郎...?どうして...
    目の前には、いないはずなのに...)」


二人とも、この感じがよくわからないまま、劇は続きます。


ロコ「関羽よ、よく来てくれました。
   あなたは将としても、人としても優れた者。
   私はあなたを失いたくないし、
   これからも漢帝国のために尽くしてほしいと思っています。
   だから、偏将軍の位をあなたに与えるよう
   皇帝にお願いして、認められました。
   記念として、この新しい服を送ります。
   着てみてください。よく似合いますよ。」

      ・

ハム太郎「ありがとうなのだ。
     それじゃ、さっそく着てみるのだ。」

ばさばさっ...ちゃきちゃきっ...

      ・

ロコ「あれ?
   関羽、折角貰った新しい服の上に
   なぜ元の古い服を着るのですか。」

      ・

ハム太郎「これは劉備兄さんからもらった
     大事なだいじな服なのだ。
     新しい服をもらったからといって
     捨てるのはいやなのだ。」

      ・

ロコ「関羽...あなたはそこまでして劉備を...
   おや?
   馬がやせていますね。
   よい餌を与えているのですか?」

      ・

ハム太郎「ぼくは体が大きいから、
     ふつうの馬はみんな耐えられなくて
     つぶれてしまうのだ。」

      ・

ロコ「そうなのですか。
   それでは、この馬を差し上げます。
   覚えていますか?
   呂布が乗っていた名馬、赤兎馬です。
   とんだ暴れ馬なので誰も乗りこなしていませんが、
   あなたになら丁度良く扱えるでしょう。」

      ・

ハム太郎「やったー!
     曹操様、ありがとうなのだ!
     これさえあれば、劉備様のいるところへ
     すぐにとんでいけるのだ!!」

      ・

ロコ「劉備の...」


  *********

ロコ「ああ関羽よ、どうしてあなたは私のために戦ってくれないの...
   私はあなたに全てを与えることもできるというのに...」

カナ「曹操様どうしたんですかふさぎ込んで。」

ロコ「あ、張遼...
   あれから毎日毎日わたしは関羽のために宴を開き、
   彼にさまざまなものを与えています。
   しかし関羽はちっとも私になびきません。
   服は着てくれたけど、その上に劉備の服を着るし、
   馬なら劉備のところに帰れると言い、
   美しい食器はみんな劉備の奥さんにあげてしまう...」

カナ「なるほど。
   それなら私が直接関羽に気持ちを聞いてきます。」

  *********

こうし「...という訳なんですよ関羽さん。
    どうか本当のことを話してください。」

ハム太郎「ぼくはどこにいても劉備様の弟なのだ。
     貧しい時に生死を誓った仲なのだ。
     物でしか気持ちを示せない曹操様とは違うのだ。」

こうし「では、曹操様の恩は感じてないと?」

ハム太郎「いや、感じているのだ。
     だから帰る前にひとつは手柄を立ててあげたいのだ。」

こうし「わかりました。それでは失礼します...」

  *********

ロコ「関羽は、そう言ったのですね...」

カナ「はい。あくまでも、自分が劉備の部下であることを
   忘れないようで...」

京子「曹操様!大変です!!」

ロコ「どうしたのです、荀[或〃]!」

京子「袁紹が、袁紹が攻めてきます!!」

ロコ「なんですと!すぐに迎え撃ちます!全軍、準備しなさい!」

  *********

場面は戦場に移ります。
曹操軍が袁紹軍を迎え撃つも、顔良によって総崩れになる場面に。


ロコ「強すぎる...!
   兵士たちも、顔良を見ただけでおびえる...
   一体どうすれば...!」

      ・

ハム太郎「待った、待った、待ったなのだーーー!!」

      ・

ロコ「関羽!来てくれたのですね!」

      ・

ハム太郎「来たのだ!
     顔良、出てくるのだ!この関羽が相手なのだ!」

めがね「はっはっはっ、身のほどを知りませんねぇ。
    あなたも一発で倒してあげますよ!」

バシッ!!

ドカン!!

めがね「うわぁーーー!!」

ハム太郎「顔良討ち取ったのだ!!
     さあ、袁紹軍もこれで終わりなのだ!」

まいど「ちょっと待ちいや!!」

ハム太郎「誰なのだ!」

まいど「わいは顔良の友達の文醜や!
    よくも顔良をやってくれたな、
    お返しはき〜っちりさせてもらうで!!」

バシッ!!

ドカン!!

まいど「あれぇーーー!!」

ハム太郎「文醜討ち取ったのだ!!」

      ・

ロコ「すごい...さすが関羽...
   さあ、みなの者!一気に袁紹軍をつぶすのです!
   顔良がいない今、何も怖くありません!!」

  *********

マフラー「劉備!よくもだましてくれたわね!」

リボン「え、袁紹さん、どういう意味でちゅの?」

マフラー「とぼけないで!
     曹操軍の関羽が、顔良をやっつけちゃったから、
     勝てそうだったのに勝てなくなったのよ!」

リボン「え、弟が曹操軍にいるんでちゅか!?」

マフラー「...は?
     申し合わせていたんじゃ...ないの??」

リボン「私、弟とはぐれてから、彼がどこにいったか
    わからなくなったから、連絡なんて出来ないでちゅわ。
    弟もきっとそうだと思いまちゅわ。」

マフラー「それなら、関羽にあなたがここにいることを知らせれば、
     関羽は曹操軍を抜けるの?」

リボン「ええ。弟はそういう人でちゅわ。」

マフラー「わかったわ。その言葉、信じてみる。」

  *********

トラハム「関羽さーん!」

ハム太郎「!?誰なのだ?」

トラハム「しーっ...わたし、袁紹軍の陳震。
     聞いて、劉備さんは生きているわ。
     生きて袁紹軍に入っているわよ!」

ハム太郎「えっ!!それ本当!?」

トラハム「うん。
     だから、一日も早く袁紹様の所に来て。」

ハム太郎「わかった。すぐ出発するのだ!」

  *********

ロコ「...!劉備が、生きていると!?」

京子「はい。
   これを聞いたら、関羽は必ず帰ります。
   三つの約束がありますし、
   手柄も顔良と文醜を倒したことで立てましたから。」

カナ「曹操様ー!曹操様ー!
   関羽はもう帰ったようです!
   部屋には、この置き手紙だけが残ってました!」

ジュン「それは大変です!
    曹操様、すぐ追いかけて連れ戻しましょう!」

ロコ「いけません夏候惇!
   彼を引きとめたら、私が約束破りになります。
   それよりも、ちゃんと挨拶をして
   気持ちよく別れましょう!」

  *********

ハム太郎「曹操様...
     さよならなのだ。」

      ・

ロコ「待ってください!関羽!」

      ・

ハム太郎「止めないで...ぼくは
     劉備様のところへ帰らなくちゃいけないのだ。」

      ・

ロコ「止めにきたのではありません。
   ただ、お別れを言いたかったのです。
   関羽...」

      ・

ハム太郎「曹操様、何も言わないでなのだ。
     ぼくと劉備兄さんは、
     『死ぬときはいっしょ』だって誓い合った仲なのだ。
     この決心を変えることは、
     誰にもできないのだ...」

      ・

ロコ「関羽...!わたしは、あなたを...」

      ・

ハム太郎「曹操様...
     さよならなのだ。」

      ・

ロコ「関羽!!」


関羽は、何も言わずに曹操のもとを去りました...


ロコ「劉備よ...
   今日ほど、あなたをうらやましいと思った日は
   ありません。
   私は、関羽を愛しています...」


ロコちゃんとハム太郎の、
『お互い離れた場所にいるのに
目の前で対峙しているような不思議な感覚』は
ここで途切れました。

この体験は、ロコちゃんもハム太郎も
誰にも話さず、
それぞれの胸の内にしまわれるものとなりました。

それから劇は続き、そして何事も無く終わりました...

  *********

その夜...
いつものように、ロコちゃんは日記をつけています。

ロコ「今日はとても不思議な出来事が起こった。
   わたしがお楽しみ会でやった劇のときに、
   関羽の姿をしたハム太郎が
   目の前にいたような気がした...」

ハム太郎「ぼくも、劇をしたとき、
     ロコちゃんがそばにいたような気がしたのだ。」

ロコ「どうして、そうなったのかは、全くわからない。
   でも、私は思う。
   きっと、わたしとハム太郎の心が通じ合ってるから、
   同じものが見えたんだと。
   わたしの役は曹操だったけど、
   ハム太郎とわたしはむしろ
   関羽と劉備のような仲なのかもしれない。
   きっと、そう思う。そう思いたい。
   わたしは、ハム太郎のことが大好き。
   だから、ハム太郎にはこれからもずっと、
   わたしにとって関羽でいてほしい...」

ハム太郎「うん!ロコちゃんは、ぼくの劉備なのだ!」


ロコ「今日はとっても楽しかったね。
   あしたはも〜っと楽しくなるよね、ハム太郎♪」

ハム太郎「くしくし...ふわぁ〜...」




         おしまい